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荒舘康治のこだわり農家さん訪問記!! vol.4

無題ドキュメント

こんにちは!ごちそうナビゲーターの荒舘です。
最近、北海道産のブランド和牛が増えてきましたが、みなさん、和牛の生産は完全な分業制だということをご存じですか?
今や北海道は名だたる和牛の生産地なのですが、生産家の多くは仔牛まで育てて全国各地へと出荷する「繁殖農家」です。仔牛はその後各地のブランド和牛として育てられます。そして一部の農家が、仔牛を育てて地域のブランド和牛として出荷する「肥育農家」として活躍しているのです。
つまり、和牛に関しては「繁殖」と「肥育」を別の牧場で分業して行うというのが現在のシステムなのですね。ところが、むかわ町には「繁殖」と「肥育」を一貫して行う畜産農家があって、しかもそのお肉は望んでも手に入らない幻の牛肉として名高いというではありませんか!100%むかわ町産の和牛が存在する!そして、品質はかなりのものらしい…早速お会いしに行ってきました。

名前:松浦 富夫さん 年齢:ひみつ

むかわ町出身。
町内で仔牛を合わせて120頭余りを飼育する松浦牧場の2代目。
先代は米作農家を営んでいたが、昭和46年頃に始まった減反政策の流れを受けて和牛生産に転身。以来和牛生産一筋の道を歩む。
2年前に牛の世話、牧場の管理を一人息子の治記さんに任せ、今は奥様の由美子さんとの3人で牧場経営を行っている。

【こだわり】
「繁殖」と「肥育」を同時に行う一貫生産にこだわり、むかわ町の稲わらと牧場内の牧草だけで繁殖した健康な仔牛を、自ら牧場内で肥育させた100%むかわ産の和牛を提供し続けること。

むかわ町内には数件の和牛酪農家が存在します。そのほとんどは肥育用の仔牛を繁殖する繁殖農家。夏は冷涼で冬も比較的穏やかな気候風土のむかわ町は、母子ともに健康な和牛を育てるのには絶好のロケーションです。

むかわ町と和牛の関わりはじめは、北海道民がまだ牛肉に慣れていなかった昭和46年にまでさかのぼります。
当時米作農家が多かったむかわ町では、国の減反政策が死活問題になっていました。町と一体になってコメの転作のために出した方策が、和牛生産の導入だったのです。この時、10数軒の農家が80頭の和牛を島根県から導入。むかわ町の和牛生産がはじまりました。

仔牛を生産する「繁殖農家」とお肉がとれる体格になるまで育てる「肥育農家」、それぞれに必要な技術も作業も異なるのですが、なぜ松浦牧場では繁殖から肥育まで一貫した生産体制を取っているのでしょうか?

そこには「自分で育てた和牛は自分たちが責任をもって値付けをして、世に出していきたい」という富夫さんの想いが込められていました。その想いはさらに食の安全へと向かい、「繁殖に関しては100%むかわ産の稲わらと牧場内の牧草だけで育てる」という100%むかわ産和牛として結実したのです。

一般に母子の健康を重視する「繁殖」に対して、良い肉を多く生産したい「肥育」は効率重視。ところが松浦牧場ではやみくもに「牛脂のさし(霜降り)」を増やしたり、体重を増やしたりはしません。それは牛の健康を損なうことにつながるからです。

「繁殖」「肥育」双方にまたがる重労働を親子3人の連係プレーでこなす松浦牧場。「品質を守るために、家族3人の手の届く範囲でやっていきたい」という3代目、治記さんの言葉にその決意がにじみます。


取材をしていると、富夫さんの朴訥な語り口に絶妙なタイミングで合いの手を入れたり、周りを和ませてくれるお母さんの由美子さん。松浦家のムードメーカーです。その後、牧場をぶらぶらしながら由美子さんの話をお聞きしていると、その行動力満点の半生にビックリ!

もともと関東で生まれ育った由美子さん。農村風景に魅せられて、将来は広大な大地で農業をやりたいと思っていたそう。そんな学生時代、北海道旅行をしていて偶然目にした一枚の写真。そこには「おいでお嫁さん」の看板が!ここに行けば農業ができると思った由美子さんが写真を頼りに探し当てたのが鵡川町役場。すぐに町までやってきて、当時良く行われていた農村青年団のお見合い行事に参加したとのこと。

「それで、うちの人と縁があったんだねぇ…」と笑う由美子さん。おいしいお肉が食べられるのは、お母さんのおかげです!


松浦牧場の肉質へのこだわりは創業した先代にさかのぼります。黒毛和牛の生産に心血を注ぎ、努力を続けたら思わぬほどの良い肉ができた。その達成感がさらなる改良への努力につながったのです。

和牛の品質ランクは高級品でA1から最高のA5までありますが、松浦牧場の和牛は常にA4ランク以上という水準を守り続けています。また霜降りの質も12段階の最高クラスに迫るものですが、富夫さんは「牛の健康を考えて、数値を追い込むことはやめている」といいます。

最近はモモ肉にも程よい霜降りが差す松浦牧場の和牛。しかし、これまではその至高の味わいを確かめることができるのは極めてわずかな人たちだけだったのです。


肉牛を出荷した後は屠場で処理され、共同組合へと出荷されていくのが通常の畜産業界。 その場合、精肉は「北海道産和牛」とひとくくりにされてしまいます。実は生産農家が自分で育てた和牛を食べる機会は意外に少ないのです。さらにむかわ町では一貫肥育をしているのは松浦牧場のみ。生産量にも限りがあります。

月に約3頭を出荷する松浦牧場では全量を組合任せにせず、枝肉の一部を屠場に近い加工業者に委託することで、むかわ町内で肉を流通できるようにしています。 このため松浦牧場のむかわ産和牛は町内3店舗の飲食店で味わえるほか、観光協会経由で町内の直売所やネット通販で購入することができます。また、むかわ町のふるさと納税用返礼品としても高い人気を誇っています。

それでも希少なことには変わりがないむかわ産和牛。お母さんの由美子さんは、「私、関東育ちだけど牛肉はあまり好きじゃなかったの。けれど、ここで初めて和牛ってこんなにおいしいってわかったのよ。うちでは滅多に食卓にのぼらないけど…」と屈託なく笑っていらっしゃいました。




荒館)
こんにちは。むかわ探訪記の荒舘です。
治記)
こちらが肥育をしている牛舎なんですが…
今は出荷に合わせて3頭ずつ同じ区画で育てています。
荒館)
タイヤが天井からぶら下がっているのはなんだろう?
由美子)
(横から)これでね、背中がかゆいときは牛が自分でかくの(笑)
荒館)
わはは。なるほど!どうやらこの出口に近い3頭が一番大きいですね。
奥に行くほど体が小さい…
治記)
はい。この房の牛はもうすぐ出荷です。
あそこで父がいじっているトラック…あれに載せて早来の屠場まで運ぶんですよ。
今日は取材中の僕に代わって父が出荷作業をしています。
荒館)
うわぁ…そのまんまドナドナの世界ですね(笑)
子供の頃とか、「牛さん行かないで―」とか言って泣いたりしなかった?
治記)
はないですないです(笑)28か月育てるともう出荷なのでいつも世話に追われて、 名前覚える前に出荷しちゃう感じです。
あ、名前は農協がつけてくれるんですけどね(笑)


荒館)
そういえば乳牛ってオスは生まれてもすぐにお肉にされちゃいますよね。
治記)
和牛はオスメス関係ないですから。味も変わらないですし。
メスはちょっとだけ体格が小さいくらいので30か月くらい育てるかな?
ただ、オスは4か月くらいで去勢されますけどね。
由美子)
(横から)えーとね、メスの見分け方にはコツがあるのよ。
治記)
だってそんなの後ろから見たらすぐわかるし(爆笑)うちは繁殖もやっているので お産に適した牛は母牛としてこっちの房に移します(といって向かいの房を指す)。
隣にいるのが生まれたばかりの仔牛で、ちゃんと母牛の母乳で育ちます。
繁殖用の牛たちはお産の時期以外は放牧でのびのびと暮らしています。
荒館)
あ、こっちの角を切っている牛たちがお母さん牛ですね。こちらはどの位生きるの?
治記)
12歳くらいまでですね。肥育牛の28ヶ月とは雲泥の差です。
この母牛たちはホント元気で、たまに脱走もするんですよ。
むかわだから許されていると思うんですけどね(笑)
荒館)
わはは。 お隣さんと「これはうちの牛だ」とかケンカになりませんしね(笑)
治記さんにとってこの仕事の大変なことってなんですか?
治記)
うーん…連休できないとか…あとうち一軒だけなので仲間が欲しいです。


  • 飼料も環境も
    100%メイドインむかわ町

    「繁殖」と「肥育」を一貫して行っている松浦牧場。 通常は牧草専業農家から買い入れる牧草もすべて自社牧場内で育てています。もちろん繁殖のための母牛や仔牛は広い放牧場内を走り回って健康そのもの!肥育牛に必要な稲わらも、全量むかわ町内の稲作農家から入手しています。徹底してむかわ産にこだわっているから、安心して楽しめるお肉になるのですね。
  • 土地に合った血統を選りすぐって結実した
    A4クラス以上の肉質

    「和牛の品質は血統で大方決まるよな」と何気なく語る富夫さん。これは有名だったり、高価だったりする種牛の血統を使えばよいという単純な話ではありません。 むかわ町の気候風土に合った血統を厳選して、松浦牧場の母牛と交配させることで、初めて高い肉質の和牛となるのです。そこに行きつくまでのたゆまぬ研究と努力があってこその高品質なのですね。
  • 家族3人が力を合わせてつくる
    ストレスフリーな生育環境

    おいしいお肉を作る秘訣はありますか?と尋ねたら 「まあ、牛と会話するしかないんだ…」と答えてくれた富夫さん。 牛たちが病気をすることなく快適に育つように、環境を整えることが大切だといいます。 家族3人が助け合いながら、常に牛たちの事を考えて暮らしているからこそ、ストレスのない和牛が育ち、結果としておいしいお肉となるのです。お母さんの話では脂の甘みが違ってくるそうですよ。

むかわ町で初めて和牛を食べて、「和牛って本当においしい!」と感動したというお母さんの由美子さん。 和牛の良さを生かした得意料理はありますか?とお聞きすると、「お肉のうまみをお野菜に移すタイプの料理が一番好きだわねぇ。肉じゃがとか…」と返されました。

えーっ!肉じゃがって…お母さん普通過ぎ(苦笑)直接焼き肉にするよりも、なぜか贅沢な気がするのは私だけでしょうか?みなさん、ぜひ試して感想をお聞かせください。

松浦さんの牧場は今回訪問した牛舎のまわり以外にも、牧草生産に25ヘクタール、山の上にも放牧地があって30ヘクタールと気が遠くなるような広さです。 月に3頭の最高級和牛を出荷するためには、こんな広大な土地と、家族ぐるみの努力が必要なんですね。
これからは流通の問題を乗り越えて、この素晴らしい和牛をきちんと皆様の食卓に運べるように、そしてむかわ町の財産として守り、広めていかねばなりません。
ブランドとは、守り伝えていく価値があるものに与えられる称号なのだと思いました。



                 
 

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